「漢方」とは大昔の中国医学が、日本に伝わり独自に発展した医学のこと。
江戸時代にオランダから伝わった西洋医学を「蘭方」と呼び、それと区別するために東洋医学を「漢方」と呼ぶようになる。
漢方薬は病気を治すことはもちろん、病気にならないために「養生」として用いることもある。
今ではドラッグストアでも購入することもできるが、医師の処方に基づき保険を使って購入することもできる。
漢方薬は「生薬」と呼ばれるもので作られています。
生薬とは薬として効能効果がある植物や動物・鉱物のことで、漢方薬は複数の生薬を組み合わせて作られているのです。(多いもので10種類以上の生薬配合)
ここでは、漢方薬の基本となる生薬と現場でよく見る漢方薬をまとめています。
主な生薬とその効能14個をまず覚える
おうぎ | 黄耆 | 気力をつける、汗をおさえる |
かんぞう | 甘草 | 生薬を調和させる、甘みを加える |
けいひ けいし |
桂皮 桂枝 |
気分を落ち着かせる、体を温め熱を下げる、痛みを抑える |
さいこ | 柴胡 | 解熱、気分を落ち着かせる、アレルギーを抑える |
しゃくやく | 芍薬 | 筋肉の緊張を緩める、痛みを抑える |
しょうきょう | 生姜 | 体を温め胃の働きをよくする、吐き気を抑える |
そうじゅつ | 蒼朮 | 体の水分バランスを整える |
たいそう | 大棗 | 体を温める、気分を落ち着かせる、元気にする |
とうき | 当帰 | 血行を促進、貧血改善、鎮痛 |
にんじん | 人参 | 気力をつける、元気にする |
はんげ | 半夏 | 吐き気を抑える、精神を安定させる |
ぶくりょう | 茯苓 | 体の水分バランスを整える、気分を落ち着かせる |
ぶし | 附子 | 体を温める、鎮痛 |
まおう | 麻黄 | 体を温めて熱を下げる、鎮痛 |
漢方薬はいつ飲む? 飲み方は?
ほぼ全ての漢方薬が食前または食間に服用するように指示されています。
これは食後に飲むと食事の成分が加わって生薬のバランスが崩れてしまい、その効果が最大限に発揮できなくなる可能性があるからです。
(漢方薬は複数の生薬の絶妙なバランスで構成されている)
ただし、飲まないよりは食後でも飲んだ方が良いので、その旨を服薬指導で上手く伝えることが大切となってきます。
また、漢方薬の名前の最後を見ればなんとなく想像できるが、「湯」「散」「丸」とは元来の飲み方を示しています。
「湯」 煎じて飲む
「散」 粉末状にした生薬をそのまま飲む
「丸」 粉末状にした生薬をハチミツなどで丸めて飲む
現在では飲みやすいように顆粒状にしてあるので、西洋薬と同様に水または白湯で服用する方法が一般的となっています。
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風邪などに効く漢方薬6つを覚えよう
漢方名 | タイプ別 | 特徴 | 主な適応症状 |
1 葛根湯 |
がっちり | 風邪のひきはじめに効果がある。 体内で汗をかいて熱を下げるのを助ける。 麻黄で痛みを抑える。 芍薬で筋肉をゆるめるので肩こりにも効果がある。 体が弱っている人には不向き。 |
発熱・悪寒・鼻水・のどなど風邪の初期症状 鼻炎・中耳炎・結膜炎・扁桃炎などの炎症、 頭痛、神経痛、肩こり |
70 香蘇散 |
ほっそり 妊婦 お年寄り |
風邪のひきはじめに効果がある。 体内で汗をかいて熱を下げるのを助ける。 体力がない、胃腸が弱い人に用いる。 うつ症状にも効果がある。 蘇葉が風邪だけでなく、アレルギーにも効果がある。 |
悪寒・発熱などの風邪の初期症状 精神不安・不眠・食欲不振 魚アレルギー |
19 小青竜湯 |
ふつう | 中国神話の青竜に由来する。 熱はないが鼻の症状があるときに用いる。 動悸や血圧があがることがあるので、高血圧や心臓病の人には要注意。 |
鼻かぜ、たん、くしゃみ、咳 アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症 気管支炎、気管支喘息、 |
29 麦門冬湯 |
ほっそり 妊婦 お年寄り |
麦門冬が胃や肺にうるおいえお与える。 半夏が痰を取り除く。 お年寄りに使われることが多い。 |
乾いた咳、痰がきれない咳 気管支炎、気管支喘息 かすれ声 |
10 柴胡桂枝湯 |
ほっそり 弱いこども |
体力がない人の長引く風邪に用いる。 痛みや疲れにも用いる。 肺、肝臓の副作用が出る可能性がある。 |
発熱・頭痛・悪寒など風邪の初期症状 腹痛、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胆のう炎・膵炎・肝機能障害などの痛み 小児虚弱、不眠、疲れ |
27 麻黄湯 |
がっちり 強いこども |
葛根湯よりも強力な風邪の初期症状に用いる漢方薬。 麻黄が多く入っているため体力がある人向け。 |
悪寒・発熱・頭痛・のど・関節痛・筋肉痛などの風邪の初期症状 インフルエンザ 気管支喘息、関節リウマチ |
補足ポイント
・風邪のひきはじめには、1葛根湯を用いるが体や胃が弱い人には→70香蘇散または45桂枝湯を用いる
・体が強い人には27麻黄湯を用いることができるが、弱い人には→127麻黄附子細辛湯を用いる。もっと弱い人には→70香蘇散を使う
・また体が弱い人の長引く風邪には10柴胡桂枝湯または66参蘇飲を用いる
胃腸の働きに関係する漢方薬8つを覚えよう
漢方名 | タイプ別 | 特徴 | 主な適応症状 |
5 安中散 |
ほっそり | 「中」は体の真ん中で胃腸のことを指す。これを「安」定させる。 含まれる延胡索が胃の痛みをやわらげる。その他の含まれる生薬でからだを温め血行をよくする、これにより胸焼け・吐き気にも効果。 |
胃痛、胃もたれ、胸やけ、吐き気 膨満感、胃下垂、胃アトニー 生理痛 |
43 六君子湯 |
ほっそり | 含まれる8つの生薬のうち蒼朮、人参、半夏、茯苓、陳皮、甘草の6つが君子と呼ばれることに由来している。 体力が無く、胃腸が弱い人向き。 |
食欲不振、胃痛、胃もたれ、胸焼け、吐き気、膨満感 だるさ、手足の冷え、 胃下垂、胃アトニー、軽度うつ |
60 桂枝加芍薬湯 |
ほっそり 女性 お年寄り |
芍薬が筋肉の緊張をゆるめ、ストレスで敏感になった大腸に効果がある。 刺激が少ないので、女性やお年寄りも好まれて使われる。 |
過敏性腸症候群(下痢・便秘) 腹痛、しぶり腹、膨満感 |
30 真武湯 |
ほっそり お年寄り |
水のような下痢症状に効果がある。 含まれる附子がからだを温め鎮痛を促すが、体力のある人には向かない。 |
下痢、消化不良、慢性胃腸炎、お腹の冷え・痛み めまい、立ちくらみ、だるさ |
126 麻子仁丸 |
ほっそり お年寄り |
含まれる麻子仁が腸をうるおし便秘を改善させる。 硬くてコロコロした便にも用いる。 |
便秘症、便秘に伴う皮膚病・食欲不振・うつ |
41 補中益気湯 |
ほっそり | 含まれる黄耆、人参が気力体力を回復させる。 入院患者やがん患者に使われることがある。 |
食欲不振、夏バテ、胃下垂、胃アトニー 疲れ、風邪、インフルエンザ予防、うつ |
9 小柴胡湯 |
ふつう こども |
長引く症状の万能薬。柴胡剤の代表 慢性肝炎の治療に用いることができるが、間質性肺炎の副作用に注意。 |
食欲不振、胸焼け、慢性胃腸炎、慢性肝炎 長引く風邪、だるさ、喘息 こどもの便秘 |
99 小建中湯 |
ほっそり 弱いこども |
桂枝加芍薬湯に膠飴を加えたもの。膠飴はあめで甘い。 体の弱いこどもの体質改善 |
小児虚弱、胃腸虚弱、胃痛、胸焼け だるさ、貧血、うつ、イライラ おねしょ、冷え性、多汗症、頻尿 |
補足ポイント
・5番に関して:5安中散は体力が無い人向け。体力がある人→14半夏瀉心湯を使う。半夏があることで吐き気も抑えることができる
・43番に関して:さらに胃腸が弱い人には→75四君子湯を用いる。六君子湯から陳皮と半夏をのぞいたもの
・30番に関して:水のような下痢には→30真武湯を使うが、泥のような下痢には→32人参湯を使うとよい
・126番に関して:便秘には126麻子仁丸や84大黄甘草湯を用いる。ただし大黄甘草湯は使い続けると効果が下がる。大黄は便秘・下痢両方に効く
・99番に関して:99小建中湯と比較して→100大建中湯はおなかの痛み、ガスでおなかが張っているときに用いる。おならの量を減らすことができると言われている
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痛みをやわらげてくれる漢方薬5つを覚えよう
漢方名 | タイプ別 | 特徴 | 主な適応症状 |
68 芍薬甘草湯 |
ふつう | 芍薬と甘草の2つからなり、筋肉のけいれんを鎮める。 即効性があるが長期服用をすると、効果が減少・血圧上昇・足のむくみが生じることがある。 |
こむら返り 胃痛・腰痛・生理痛、尿管結石による痛み 夜泣き、しゃっくり、下痢 |
18 桂枝加朮附湯 |
ほっそり | からだを温めて痛みをやわらげる。麻黄が入っていないのでからだの弱い人にも使える。 桂枝湯+蒼朮・附子から成る。 |
関節痛、筋肉痛、神経痛、骨の痛み しびれ、むちうち |
25 桂枝茯苓丸 |
がっちり 女性 |
血の巡りをよくする作用+痛みをやわらげる作用を持つ 婦人科3大漢方のひとつ |
打撲、ねんざ、肩こり、しびれ、むちうち、痔 月経不順、乳腺炎、 更年期障害によるのぼせ、頭痛 |
17 五苓散 |
ふつう こども |
からだの水分バランスを整える 水分の多いこども向き |
頭痛、腹痛、偏頭痛、顔面神経痛、しびれ 口渇、尿量減少、嘔吐、下痢、二日酔い 帯状疱疹、めまい、むくみ、胃炎、乗り物酔い |
7 八味地黄丸 |
ほっそり お年寄り |
歳をとるにつれてあらわれるからだの不調の改善 | お年寄りの不調 (腰痛、神経痛、頻尿、しびれ、高血圧、手足のほてり) おねしょ |
補足ポイント
・68番に関して:17種類の生薬からなる53疎経活血湯はギックリ腰やひざ、足の痛みに効果がある
・18番に関して:麻黄が入っている痛み止めの漢方薬として28越婢加朮湯がある。効き目が強く、体力のある人向け。熱をもった関節痛をやわらげる。また花粉症にも使われることがある
・25番に関して:婦人科3大漢方薬は他に23当帰芍薬散、24加味逍遥散がある
・17番に関して:偏頭痛に効果がある漢方薬として31呉茱萸湯がある。手足冷えや、激しい腹痛にも用いられる
・しもやけには38当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いる。「四」は手足を意味している
様々なお悩みに役立つ漢方10つを覚えよう
漢方名 | タイプ別 | 特徴 | 主な適応症状 |
23 当帰芍薬散 |
ほっそり 女性 |
当帰、芍薬が血の流れをよくする、女性の漢方薬 18桂枝茯苓丸、24加味逍遥散と共に婦人科3大漢方薬 男性が使うことも可 |
更年期障害による症状 生理や妊娠・出産に関する症状 (月経不順、頭痛、めまい、冷え性、むくみ) |
62 防風通聖散 |
がっちり | ダイエットをサポートする漢方薬 お腹の出ている人の高血圧に伴う症状に効果 |
肥満、高血圧にともなう動悸・肩こり、のぼせ、むくみ、便秘 |
15 黄連解毒湯 |
がっちり 男性 |
黄連がからだの熱を冷まし、様々な症状を落ち着かせる お酒を飲む前に服用すると悪酔いしにくい |
高血圧にともなう症状、のぼせ、鼻血、湿疹 アトピーによるかゆみ、口内炎、不眠、精神不安 二日酔い |
40 猪苓湯 |
ふつう | 泌尿器系のお悩みならこれ | 膀胱炎による頻尿・残尿感・排尿痛・血尿 尿管結石による痛み |
48 十全大補湯 |
ほっそり | 10種類の生薬が気力体力を回復させる | 疲れ、だるさ、手足の冷え 体力・気力の低下、貧血 |
54 抑肝散 |
ほっそり | 抑肝は高ぶった感情を抑えるという意味 | 認知症による症状、イライラ、不眠、夜泣き 更年期障害による症状 |
16 半夏厚朴湯 |
ふつう | 気分を晴らしてのどもスッキリ | 精神不安によるのどの違和感、咳、しわがれ声 動悸、不眠、神経性胃炎 |
39 苓桂朮甘湯 |
ほっそり | めまい漢方の代表 | めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ 頭痛、偏頭痛、のぼせ、イライラ、精神不安 |
47 釣藤散 |
ふつう お年寄り |
お年寄りの不調に | お年寄りのめまい・頭痛・肩こり・高血圧 |
12 柴胡加竜骨牡蛎湯 |
がっちり | 精神が不安定なときにおこる症状に効果がある 哺乳動物の化石化した骨から作られる |
悪夢、不眠、円形脱毛症 めまい、動悸、頭痛、高血圧 |
補足ポイント
・25桂枝茯苓丸はがっちりタイプ、23当帰芍薬散はほっそりタイプ
・62番に関して:肥満に効果→20防己黄耆湯は体力のない水太りの人向け、8大柴胡湯は体力のある人向け
・15番に関して:女性には61桃核承気湯を用いる
・40番に関して:膀胱炎に効果のある107牛車腎気丸はしびれや神経痛にも効果がある
・48番に関して:41補中益気湯と共に元気にする薬の代表。貧血には71四物湯が効く
・54番に関して:その他に夜泣きに効果ある漢方薬→72甘麦大棗湯、68芍薬甘草湯がある
・16番に関して:のどの渇きを抑える→34白虎加人参湯は特に糖尿病患者の渇きに有効
・39番に関して:より体力がないひと向け→37半夏白朮天麻湯
全ての漢方薬はこちらの記事で紹介しています。
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