つ、ついに!!あの通知がやってきました!
新規開設の保険薬局を対象とした個別指導の通知です。
本音を言えば、コロナ渦にてあわよくば実施されないのではないか?!と考えていました。(関東の友人の薬局では1年経過するも通知が来ていないそうです。)
近畿厚生局及び滋賀県による社会保険医療担当者の新規個別指導の実施について(通知)
ここでは新規個別指導の通知からその対策、当日には実際にどのような感じで進行していくのか、そのポイントを解説しています。
地域によって、また担当の指導員によってかなりの当たりハズレがありますが、しっかりとした事前の準備が必要です!
いくら日々の業務をきちんとやっているから大丈夫だよと思っていても、当日の指導内容によっては再指導になったり、金銭的な返還命令をくらってしまってはたまったもんではありません!!
少なくとも事前の1週間はきちんと対策をとりましょう!
目次
新規個別指導のスケジュール
新規に薬局を開設して約1年後にこの通知がきます。これはM&Aなどの事業譲渡で経営者が変わる場合も新規となるので同じです。
例えば、10月1日オープンの薬局なら1年後の10月の中旬に通知が届きます。
通知内容は、1ヵ月後にあんたのとこの薬局の個別指導しますよ、といったことが書いてあります。
そして個別指導日の10 日前までに、誰が出席するのか、また事前の薬局の情報を記載した書類を厚生局までFAXしなければなりません。
その約3日後、つまり個別指導日の1週間前に、個別指導を行う該当患者リストがFAXにて厚生局から送られてきます。
(FAXが送られる前日に、薬局に電話がかかってきて、明日該当患者リストを送付するから、受け取ったら受け取り確認のFAXを折り返すよう言われます。)
そしてそのFAXを受け取った日から残業必至の一週間がスタートします!!
表にまとめると以下のようになります。
例:10月1日オープンの薬局
- 10月1日薬局オープン
- 1年後の10月中旬 新規個別指導の通知がくる(11月15日に実施するよ~)
- 11月の5日までに、厚生局にFAX送信(通知に添付の資料)←以下の記事で解説!
- 11月7日 厚生局から明日FAX送るよと電話がある
- 11月8日 厚生局から該当患者(10名)がFAXされる
- 該当患者のリストを受け取りましたよとFAXを返信する
- 11月15日 個別指導当日
コロナになったり、その可能性がある場合は出席が免除されるかもしれないことが書かれていますが、結局は延期になるだけなので、その逃げ道はオススメできません。
また出席者ですが、管理薬剤師は必ず出席で、1-2名程度という記載があります。
管薬のスケジュールと、開設者などできれば個別指導経験者のスケジュールを早めに確認することが必要です。
個別指導1か月前
通知がきたらまず日程の確認。
そして管理薬剤師を含む出席者の選定。
次に厚生局へFAXする書類の作成。(FAX連絡票、保険薬局の現況)
地域によって様式が異なるかもしれませんが概ね同じようなものです。
レセコンでデータを打ち出して、2~3時間もあれば終わる内容です。
そして、以下の『準備していただく書類等』に記載してある該当患者リストに関わらないものをそろえてください。
(1)調剤録等(別途連絡する患者)
(2)施設基準に係る届出事項関係書類
(3)薬局の管理に関する帳簿(業務日誌)
(4)領収証(控)※保存している場合
(5)領収証及び明細書の様式(見本)
(6)患者ごとの一部負担金徴収に係る日計表等の帳簿
(7)審査支払機関からの返戻・増減点通知に関する書類
(8)調剤報酬請求事務を外部委託している場合はその契約書
(9)電磁的記録の保存に関する運用管理規定(電子薬歴を使っている場合)
(10)厚生労働大臣が定める事項等の掲示が確認できるもの
(11)同封の別添1 保険薬局の現況
(1)の①、②調剤録と処方せんは該当患者がまだわからないので無理です。③の薬歴も無理ですが、実際に提出する薬歴をどのようにしてレセコンから出力するか、ということは事前にチェックしておいてください。④の薬情・手帳も該当患者がわからないので無理です。⑤、⑥も無理。
(2)の施設基準に係る届出事項関係書類というのは、
(3)の業務日誌は再度見直しましょう。毎日必ず深い内容のものを書かなくてはならないというわけではありません。「特になし」の日があってもよいです。
業務日誌記載のポイント
- 日付、曜日、営業時間、処方枚数、勤務薬剤師名、記載者名、冷蔵庫の温度
- メーカー、卸など来局者、特別な患者など外部のこと
- 疑義照会件数、業務や勉強会など内部のこと
日々書いておかないと、あとで思い出しながら書くのは正直つらいところです。。。
(4)の領収書は保存している場合なので、保存していませんでよいです。
(5)の領収証及び明細書の様式の見本は準備しましょう。このとき、必要事項がきちんと記載されているのか再度確認してください。
(6)日計表は日々の業務できちんとファイリングしていれば問題はありませんが、すぐに取り出せるようにチェックをしておきましょう。
(7)返戻・増減点数通知に関しては1年分その内容を再度確認してください。なぜ返戻になったのかを説明できるようにしておきましょう。
(8)多くの薬局は外部に委託していないので、不要です。
(9)今どきは電子薬歴を使っているところがほとんどです。使用しているレセコン会社に連絡をして、『電磁的記録の保存に関する運用管理規定』をゲットしましょう。だいたい持っています。もしなければネット上で落ちているものを編集して印刷しとけば大丈夫です。
(10)これはきちんとやっている薬局であれば、掲示してあるものを写真でとって、プリントアウトしておけばよいです。何が必要なのかは以下の記事の「薬局内掲示物」のところを参考にしてください。
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(11)この保険薬局の現況は先に述べた通りです。さっさと記入しましょう。
個別指導1週間前
だいたい午前中に厚生局から該当患者リストがFAXされてきます。
今か今かと、ドキドキしながらあの面倒な患者だったら嫌だなとか、あそこの病院の患者だったらいいなとか色々と考えながら待つことになります。
新規個別指導の場合は、10名です。
その内訳は、社保2、国保4、後期4であることが多いです。だいたい面倒な患者は後期なので、社保、国保はサービス患者とみてよいでしょう。
このFAXを受け取り、受け取ったよという返信FAXを厚生局にした瞬間から、いよいよスタートです。時間は限られています。スタッフ総動員して個別指導まで突っ走りましょう!!
処方せんと調剤録をそろえる
まずやることは、該当患者が直近1年間で何月何日に来局しているのか全てリストアップすることです。そもそも開局して1年くらいしか経っていないのでその患者の処方せんは全て出すことになります。
中には3回しか来局していない患者とかもいるかもしれませんが、それはサービス患者です。
処方せんを保管してある場所から処方せんの原本と調剤録を全て探し出してください。これは事務スタッフにお願いするとよいでしょう。(薬剤師はここに労力を割くべきではない)
全て揃ったら、事務スタッフに以下のことを指示してください。
- 処方せんと調剤録の糊付けはしっかりできているか(処方せん裏に印刷であれば不要)
- 処方せんに薬局所在地・薬局名・調剤日・薬剤師の記名押印(もしくは署名)が正しく記載されているかチェック(薄くて消えたりしていないか)
- 調剤日と調剤録に記載の日付の一致の確認
- 鉛筆書きや、メモは消し去る
- 医師の印鑑漏れがないか(署名なら印鑑不要)
- 処方せんの有効期限は問題ないか
- 入力内容のチェック(余裕があれば)
薬剤師はその間に、何故この患者が選ばれたのか、、、その意図を考える作業から始まります。
もちろん薬歴を意識しなければなりません。
その患者は何がポイントとなるのかを考える
- ハイリスク加算を算定しているか
- 一包化加算を算定しているか
- 乳幼児加算を算定しているか
- 手帳シール無しが続いていないか
- 夜間休日加算とっているか
- 重複加算とっているか
- ビタミン剤など長期に渡って処方されていないか
- PPIなど期間の制限のあるものが漠然と処方され続けていないか
- 睡眠薬の重複、倍量投与がされていないか
- そもそもその用法用量で正しいのか
- 併用薬との禁忌、併用注意などないか
- 既往歴と併用薬、処方薬に問題はないか
薬歴の見直し
ポイントが分かれば、それを意識して薬歴を見直してみましょう。
☆ハイリスク加算を算定しているのであれば、その条件を満たすべく薬歴に記載しなければなりません。
ハイリスク算定におけるポイント
「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」を参照せよ。
処方されたすべてのハイリスク薬について指導せよ。
参考特定薬剤(ハイリスク薬)管理指導加算の算定要件と服薬指導について解説
☆一包化加算を算定する為には、まず加算のとれる条件を満たしていること、医師の指示があることを前提として薬剤師における役割をきちんと果たしているかがポイントになります。
一包化加算におけるポイント
薬剤師として一包化の意義を確認しているか
頭書きと薬歴にその旨記載しているか
その人は何故一包化が必要なのか(痴呆のため管理ができない、リウマチのためヒートから取り出し困難等)、そして一包化にすることでそのコンプライアンスは向上しているということを薬歴や頭書きに記載すればよいわけです。
☆お薬手帳をもってきていない患者には薬剤師として果たすべき責務があるようです。
手帳無しにおけるポイント
手帳を持ってきてない患者に、手帳の有効性をアピールしているか
頭書きと薬歴にその旨記載しているか
現在の制度では手帳を持っていない患者は点数が高くなります。医療費を下げたい国としてはここも鋭く突っ込んできます。たとえ何らかのアピールをしていなかったとしても、きちんとやったことにして記載することが大切です。またこの手帳の有無と基本確認項目が一致しているかも再度確認しておきましょう。
☆薬歴の連続性に注目して見直してみましょう
薬歴で次回確認すると記載したことを、次の投薬時にしっかり確認をしているか、薬歴にその記載があるかの確認をしましょう。
処方せんの見直し
薬歴の見直しで気づいた点を意識して、きちんと疑義照会がなされ、薬歴に記載してあっても処方せん原本に記載していなければ意味がありません。
処方せんにきちんと疑義照会がなされた文面がかかれているか再度チェックをしてください。
頭書(表書)の見直し
薬歴の見直しで気づいた点を意識して、きちんと頭書に記載されているかも再度チェックをしてください。
疑義照会や、手帳をもってくるように指導した、一包化の意味など患者に関することは随時更新して書いておくと無難です。
既往歴・生活スタイルなどの見直し
既往歴と生活スタイルが処方薬・併用薬と問題ないかチェックをしてください。
例えばグレープフルーツをよく食べるひとに、きちんと指導ができているか。
緑内障の人にはそれが禁忌となる薬が出ていないか、、等。
個別指導当日
指定された資料を全て揃えると段ボール1箱くらいにはなります。卸に頼んでオリコンを1つ借りておくのも手です。
指定時間の10分程前に会場入りし、手指の消毒を促されました。
まず県の医療福祉部の係員と一緒に、持参した資料の確認から始まります。
これを一つずつ提出します。 確認が終わると、開始時刻まで着席して待っているか、トイレで時間をつぶしましょう。
会場には、先ほどの係員と薬剤師である指導員、それに中立を保つためか薬剤師会の人がいます。←基本的にこいつは助けてくれません。
そして約1時間の個別指導が始まります。
始めに、医療福祉部の係員から事務的な質問があります。(約10分)
そして次に指導員から該当患者10名について指導を受けます。(約45分)
最後に指導員から総評を受け、何か言うことはあるかと求められます(約5分)
結果は後日、郵送にて通知される、返還命令などあった場合は責任をもって患者にも対応するように。とかなんとか言われます。
実際にどんな指導だったのか
医療福祉部の係員から
・開局時間について届けているものと現在の実際の時間は同じか
・勤務薬剤師の確認(枚数に対して適当か)
・薬のダブルチェック・監査体制などはどうなっているのか
・休憩はどのようにしてとっているのか(時間、場所)
・薬歴はいつ書いているのか
・歴やハイリスク、乳幼児加算を自動算定していないか
・領収書・明細書は全員に配っているか
・処方せん、薬歴の保管期間を把握しているか
・返戻はスタッフ全員で共有しているか
・ポイントや値引きなど行っていないか
正しい薬局運営をしている管理者であれば、特に困るような質問ではありませんね。
もちろん正直に答えてはダメです。正解を答えてください。
指導員から
・外用薬の部位はきちんと確認しているのか?(レセプト上は略可だが、薬歴にはきちんと記載すること)
・漢方薬の食後の用法の疑義照会はせめて最初の一回はするようにすること
・夜間休日加算の根拠となる時刻を調剤録はもちろんのこと、薬歴にも記載することが望ましい
・緑内障点眼出ている人は併用薬に特に気を付けること。眼圧高い人は特に。禁忌薬多い
・ノイロトロピンの分3は一応ダメ。適宜増減の記載があってもやはり疑義照会することが望ましい
・処方せんの押印欄が小さくて、そこに押せなくてもその近くに押せば差し支えない
・インシュリンの注射の単位はしっかり確認しているか。レセプトにも反映させることが望ましい
・DM薬の選定について。第一選択薬としていないか。(例:カナリア配合錠など)
・各医薬品の有名な副作用についてしっかりと確認をしているか
こういった感じで該当患者を1人ずつ、薬歴と処方せん・指導官がもっているレセプトをしっかり吟味されつつ質問や、指導をうけます。
教えて頂くという謙虚な姿勢が大事です。言い負かしてやろうなどとは考えてはいけません。
ちなみにこの指導員、、少なくとも数か月分のレセプトデータをもっていやがりました。辻褄の合わないことは見抜かれてしまいます。
この指導を受けている間に、医療福祉部の係員が日計表や業務日誌など先に提出したものをもの凄い勢いでチェックしていました。
個別指導から約1ヵ月後
薬局に特定記録郵便で結果が送られてきます。
①「概ね妥当」
特に問題点がなかった場合は、「概ね妥当」として指導が終了になります。
②「経過観察」
指導で指摘された問題点が軽微な場合は、「経過観察」となり、事実上の指導の終了を意味します。
この場合、軽微な問題点の改善報告書の提出が求められます。これをサクッと提出して終わりです。
③「再指導」
指導で問題点が指摘され、軽微でない場合は「再指導」となります。
約1年後に再度個別指導が行われます。
④「要監査」
個別指導によって不正請求が明らかになった場合には監査が行われます。
監査が行われた場合は、その結果に応じて「注意」「戒告」「取消」などの処分がされます。
まあ、だいたいの薬局は 「経過観察」になると思います。
ここを目指して最低限の努力で個別指導を乗り切りましょう!!
まとめ
しっかりと準備すればたいしたことはない