薬剤師をやっていて、小児科の薬に対して苦手意識はないでしょうか?
作るのが面倒くさいというだけではなく、処方せんに記載の小児薬用量が本当に適正量なのか、不安なまま調剤・投薬をする薬剤師もいることでしょう。
ただ処方せん通りに調剤し、投薬をするだけでは何のための薬剤師であるかわかりません!
薬剤師として小児の体重や年齢、症状をみて処方量が多いのか少ないのか、また疑義照会を行うべきか、適正量の範囲内か、一瞬で判断を下さなければなりません。
ここでは、より実践に近い形で、最低限の労力で処方量の監査をするポイントを解説していきます。
目次
小児年齢と体重
まず覚えてほしいのは、一般平均的な小児の年齢と体重の関係です。
年齢 | 0ヶ月 | 3ヶ月 | 6ヶ月 |
体重 | 3kg | 6kg | 8kg |
1歳 | 2歳 | 3歳 | 4歳 | 5歳 | 6歳 | |
10kg | 12kg | 14kg | 16kg | 18kg | 20kg |
・産まれたときにだいたい3000g(3kg)あり、3ヵ月後には6kg、半年後には約9kgになります。
産まれてから半年までは3-6-9と覚えましょう。もちろん個人差はあります。
・次に1歳で10kgとなりこれを基準に1年ごとに2キロずつ増えていき、6歳で20kgとなります。
1歳からは6歳まで10-12-14-16-18-20と覚えましょう!
ここで一番重要なのは1歳で約10kgということです。
パーセント表記と含有量の関係
粉薬にはクラリスDS10%のように〇〇%と表記があります。
これはその1g中、又は1ml中に含まれる有効成分の含有量を表しています。
1g=1000mgなので、100%だと1g中に1000mg有効成分が含まれていることになります。
つまり、10%だと1g中に100mgの有効成分が含まれます。
% | mg/g(粉薬) | mg/ml(シロップ薬) |
---|---|---|
0.001% | 0.01mg/g | 0.01mg/ml |
0.01% | 0.1mg/g | 0.1mg/ml |
0.1% | 1mg/g | 1mg/ml |
1% | 10mg/g | 10mg/ml |
10% | 100mg/g | 100mg/ml |
覚え方としては、単純に%の前の数字を10倍した量が1g中、又は1ml中に含まれる有効成分量です。
実例で学ぶ小児薬用量監査方法
さてここで、以下の例をとって処方監査をしてみましょう。
ムコダインDS50% 0.9g 1日3回 毎食後
処方せん記載情報より患者年齢 3歳8か月
上記のように、現在処方せんに記載される薬の数字は1日量となっています。(頓服は別)
つまり、大前提としてまず薬の1日量を覚えておかなければなりません。
《ムコダインDS50%の用法用量》
1日30mg/kgを3回に分服
通常の監査
このムコダインの量が患者年齢に対して適正量なのかを監査します。
① ムコダインDS50% 0.9g は 有効成分量で450mg(500mg×0.9gより)
② この450mgを1日用法(30mg/kg)で割ると、15kg(450mg÷30mg/kgより)
③ 15kgは上記表より3歳と4歳の間
④ 処方せん情報(3歳8か月)より、この量は適正と判断できる。
念のため、投薬時に母親に体重を確認→約15kgと母親より回答
このステップだと4つの段階を踏むことになります。
通常監査時の無駄を省く
より実践的な監査をするためには、無駄を省き、よく出るものを覚えておく必要があります。
まず、現在の処方せんはほぼ、製剤量で記載されてきます。(まれに成分量記載もありますが・・)
次に、外来でやってくる小児の多くは10kg~20kgの間です。つまり、1歳から6歳の間
この2点を考慮すれば、わざわざ体重1kgあたりの成分量を覚える必要はありません。
覚えるべきは、体重10kgあたりの製剤量です!
ここで、先ほどのムコダインですが、、体重10kgあたりの製剤量に換算すると
《ムコダインDS50%の用法用量》
1日0.6g/10kgを3回に分服
となります。(30mg/kg÷500mg/g×10kg)
一瞬で監査する方法
① ムコダインDS50% 0.9g は 0.6gの1.5倍なので、体重10kgの1.5倍は15kg
② 15kgは上記表より3歳と4歳の間
④ 処方せん情報(3歳8か月)より、この量は適正と判断できる。
念のため、投薬時に母親に体重を確認→約15kgと母親より回答
つまり、このアプローチを使えば、複雑な計算は何もなく一瞬で適正体重を導き出せます。
まず覚えるべき小児薬用量一覧《頻出版》
現場でよく目にする小児薬の体重10kgあたりの製剤量を一覧表にしました。
まずはこれを暗記しましょう。
幅のあるものは、覚えやすい数値に近似した値を採用しています。
抗生物質
薬剤名 | 1日量(g/10kg) | 近似値(暗記する値) |
サワシリン細粒10% パセトシン細粒10% ワイドシリン細粒10% |
2.0~4.0 | 3 |
ワイドシリン細粒20% | 1.0~2.0 | 1.5 |
セフゾン細粒小児用10% | 0.9~1.8 | 1 |
フロモックス小児用細粒100mg | 0.9 | 1 |
メイアクトMS小児用細粒10% | 0.9 | 1 |
クラリスドライシロップ10% クラリシッドドライシロップ10% |
1.0~1.5 | 1 |
ジスロマック細粒小児用10% | 1 | 1 |
オラペネム小児用細粒10% | 0.8~1.2 | 1 |
オゼックス細粒小児用15% | 0.8 | 0.8 |
風邪薬
薬剤名 | 1日量(g/10kg) | 近似値(暗記する値) |
アスベリンドライシロップ2% | 0.5~1.25 | 1 |
アスベリン散10% | 0.1~0.25 | 0.3 |
メプチンドライシロップ0.005% | 0.5 | 0.5 |
ムコソルバンDS1.5% プルスマリンAドライシロップ1.5% ムコサールドライシロップ1.5% |
0.6 | 0.6 |
ムコダインDS50% | 0.6 | 0.6 |
オノンドライシロップ10% | 0.7~1.0 | 0.6 または 1 |
ザジテンドライシロップ0.1% | 0.6 | 0.6 |
ゼスラン小児用細粒0.6% ニポラジン小児用細粒0.6% |
0.2(鼻炎、蕁麻疹、そう痒) | 0.2 |
0.4(気管支喘息) | 0.4 |
ムコダインDS50%の0.6はひとつの基準となる頻出薬となるので、まずこれだけは覚えましょう!
胃腸薬
薬剤名 | 1日量(g/10kg) | 近似値(暗記する値) |
ナウゼリンドライシロップ1% | 1~2 | 1 |
ロペミン小児用細粒0.05% | 0.8 | 0.8 |
シロップ薬
薬剤名 | 1日量(ml/10kg) | 近似値(暗記する値) |
アストミンシロップ0.25% | 3~4.5ml | 3 |
ムコダインシロップ5% | 6ml | 6 |
アスベリンシロップ0.5% | 2.88~5.76ml | 3 または 6 |
ムコソルバンシロップ0.3% | 3ml | 3 |
年齢で量が変わる薬
アレロック顆粒0.5% | 1回0.5g(2~6歳)、 | 2回 |
1回1.0g(7歳以上) | ||
クラリチンドライシロップ1% | 0.5g(3歳~6歳) | 1回 |
1.0g(7歳以上) | 1回 | |
ジルテックドライシロップ1.25% | 1回0.2g(2歳~6歳) | 2回 |
1回0.4g(7歳~14歳) | 2回 | |
ザイザルシロップ0.05% | 6ヶ月~11ヶ月:2.5ml | 1歳未満(1回) |
1~6歳:2.5ml | 1~14歳(2回) | |
7~14歳:5ml |
体重でなくて、年齢で量が規定されているものは分包品が発売しているものが多く、いちいち計量して分包する必要のないものがほとんどです。
ザイザルシロップは計ってくださいね。
さらに瞬間的に処方監査する方法
小児薬の処方で数が多くなってくるものは、風邪薬ではないでしょうか。
ちょっと鼻水がでるからといって、たくさんの薬が処方されることがあります。
だいたいムコダインが処方されることが多く、これを基準に他の粉薬を見ると、さらに監査が早くなります。
上記の表より、ムコダインDS50%は0.6でした。
これを基準に、
メプチンドライシロップ0.005%はムコダインよりちょっと少なめ
ムコソルバンDS1.5%(アンブロキソール)、ザジテンドライシロップ0.1%は同量
アスベリン散10%は約半量
ゼスラン小児用細粒0.6%(メキタジン)は1/3の量
と見ただけで感覚的に処方監査ができるようになります。
できる薬剤師は一瞬でここまででやっています。